IRVA Tokyo Conference 2018 & International Symposium(国際レトロウイルス学会東京会議2018および国際シンポジウム)
開催のご案内

IRVA理事長・組織委員会委員長  渡邉 俊樹
(東京大学名誉教授、日本HTLV-1学会理事長)

この度、国際レトロウイルス学会(IRVA)理事会の承認のもとで、隔年開催の学術集会に加えて、学会の新たな公式のイベントとしてIRVA Tokyo Conference 2018 & International Symposium(国際レトロウイルス学会東京会議2018および国際シンポジウム)を開催することになりました。我が国の日本HTLV-1学会も共催者として協力することになりました。

IRVA Tokyo Conference 2018 & International Symposiumは、2017年春に東京で開催された第18回IRVA学術集会でIRVA理事長に就任した渡邉が、学会理事及び有志からの提案を受け、検討の結果、学会の公式なイベントの一つとして開催する運びになりました。この会議とシンポジウムは、世界各国のウイルス学、疫学、感染免疫学、臨床免疫学、小児科学、産婦人科学、臨床検査、血液腫瘍学、神経学および眼科学の研究者が一堂に集まり、直接的に交流することにより情報交換と国際共同研究の活性化に貢献することが期待されております。

IRVAは、HTLV-1および関連したウイルス(ウシ白血病ウイルス(BLV)など)の研究と、ウイルスが引き起こす疾患の研究を進めるための学会として1988年に米国メリーランド州で設立されました。学会の目的は、この領域の基礎研究者、臨床医と患者が一堂に会して、情報を交換し合うことにより、感染症や関連疾患の理解と疾患の治療法の開発を進めることにあります。当学会の国際学術集会は2年に1回、南北アメリカ、ヨーロッパおよびアジアの持ち回りにより開催されており、昨年の東京の学術集会は18回目に当たります。

この様な学術集会に加えて、世界各地の研究者が直接会い、会話することを通じて個人的な関係を構築する場を設けることは、種々の領域の研究者が研究分野の垣根を超えた交流を促進する上で貴重な機会になると考えております。特に、同一のウイルスが様々な疾患を引き起こすことが知られているHTLV-1の領域では、感染予防と疾患の発症予防および治療法開発の研究推進は、既存の研究領域のみの発想では不十分であると考えられます。IRVA理事らとの打ち合わせでは、研究者や医師同士が直接会って個人的な関係を形成し、情報交換と共同研究の促進を図るには、世界各地からの交通の便を考慮すると開催地としては東京が格好の場所であるとされました。また、継続性が重要であるとの考えから、毎年1回継続的に開催することを視野に入れ、初回を準備することになりました。

具体的な会議は、7月12日(木)と13日(金)の午前中に、海外の主任研究者約15名と国内の主任研究者約20名が円卓方式で会議を開催します。国内の会議参加者は事前に調整しますが、興味のある方は自由にオブザーバーとして会議を傍聴できる様に準備しております。また、世界各国の研究者が会議に参加するこの機会に、一般公開の「国際シンポジウム」も同時に開催することにより、世界における現在のHTLV-1およびその関連疾患の理解と研究の成果を広く一般の方々とも共有することを目指しております。これらの会場としては東京大学医科学研究所の病院8階会議室と講堂で開催いたします。

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染者は、わが国では約110万人、世界では1000-2000万人いるとされています。 HTLV-1 感染は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、HTLV-1関連脊髄症 (HAM/TSP)、HTLV-1ぶどう膜炎等、種々の疾患をひき起こします。このうち ATL は極めて悪性度の高い予後不良の悪性腫瘍であり、HAM/TSP は進行性の麻痺のため著しくQOLを損なう神経難病です。これまで HTLV-1感染症の病態研究は精力的に行われてきましたが、これらの疾患の発症メカニズムは完全には解明されておらず、また根本治療も確立されていません。我が国では、2011年に政府が「HTLV-1総合対策」を立ち上げ、水平感染や母子感染による感染拡大を防ぐため、献血者だけでなく妊婦に対してもHTLV-1 抗体検査や感染告知が行われるようになり、関連疾患の病態解明の研究成果をもとに、診断や治療薬の開発が進んでおります。また、これらの活動を通じて、検査や保健医療、社会的な側面にも解決すべき問題が明らかになってきています。

一方、HTLV-1感染は、我が国以外でもアフリカ、カリブ海諸島や中南米の国々でも多数の感染者が確認され、研究が進められています。米国やヨーロッパでは、これらの国々からの移住者の間にHTLV-1感染および関連疾患の発症が認められ、治療拠点が形成されています。近年では、イランやルーマニアなどで感染者が存在し、関連疾患を発症していることも明らかになって来ました。更に、オーストラリアなどのオセアニア諸国においても原住民(いわゆるアボリジニー)の間で極めて高い感染率を示すことが明らかになって来ております。この地域のウイルスはメラネシア型(Type C) HTLV-1で、最も広く分布しているHTLV-1 cosmopolitan型 (Type a,b)とは異なり、関連疾患としても気管支拡張症患者が多いことが報告されています。

この様に、世界規模におけるHTLV-1感染症の実態の解明と関連疾患の同定も人類共通の健康問題として継続的に取り組むべき課題であることは明らかです。したがって、HTLV-1感染とその関連疾患の克服は、我が国のみならず、広く海外の諸国においても、HTLV-1感染者や家族にとっては切実な願いであるだけでなく社会全体の要請となっております。

つきましては、この「国際レトロウイルス学会東京会議2018および国際シンポジウム」の意義と重要性をご理解いただき、本会議成功のために、ご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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